03

2月

2011

サードカルチャーキッズとは?(元ニュージャージー大学日本語教師 日部八重子)

サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち』(スリーエーネットワーク)を紹介します。

 

サードカルチャーキッズとはどういう子どもたちなのでしょうか?


サードカルチャーキッズは成長期のかなりの年数を両親の属する文化圏の外で過ごします。また、サードカルチャーキッズはあらゆる文化と関係を結びますが、どの文化も完全に自分のものではないと感じます。そして、かかわった文化すべてから様々な要素を取り入れて独自の融合文化を形成していきます。また、どこにいても「浮いてしまう」という疎外感のかたわら、国や文化を問わず、同じような体験を持つ人に強い連帯感を感じます。


「サードカルチャーキッズ」という言葉は、1950年代に使われ始めました。両親の生まれた国の文化を第一文化、現在生活している国の文化を第二文化として、そのどちらでもないはざまの文化を第三文化とし、その独自の文化の中で生きる子どもたちを「第三文化の子どもたち=サードカルチャーキッズ」というのです。これは、当時在インドのアメリカ人駐在員を研究対象としていた、アメリカ人社会学者ウシーム博士が言い出しました。その後、国際ビジネスの拡張から、当初は外交官や軍人、宣教師など少数だった海外生活者は、現在では劇的に増えました。日本も例外ではありません。今や日本企業は多国籍企業となって世界に進出し、海外日本人学校・日本語補習校は世界中あらゆる場所に存在します。


また、日本国内を見ても、200万を超える外国人が生活しています。日本各地の小・中学校では国際教室を設け、外国人児童に日本語を教えるところが増えてきているようです。このように両親の文化圏の外で暮らす子どもたちは、世界規模で年々増え続けているのです。


本書『サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち』は、サードカルチャーキッズの様々な体験談を交え、さらに心理学的なアプローチを盛り込んだ構成となっています。国を越え、文化を越え、多様な文化のミックスの中で育ち、多言語を操る子どもたち。彼らのことを理解するのは、私も含め単一文化・単一言語環境に育った者たちにはなかなか難しいものがあります。私たちはどうしても、自分の価値観から抜け出すことができないからです。


以前、私の子どもが在籍していた北米の日本語補習校では、ある問題が発生していました。国際結婚などの理由で日本に帰る予定のない子どもたちに関してですが、親の求める「国語教育」と、子どもが必要とする「継承語教育としての日本語教育」の間に大きな隔たりがあったのです。また、私はアメリカ・ニュージャージーの州立大学で外国語としての日本語をアメリカ人学生に教えてきましたが、「外国語教育としての日本語教育」もまた形が違います。


このように日本語を教えるにしても、その教える相手によって教え方はずいぶん変わってきます。相手のニーズを見極めることがとても大切になってくるのではないでしょうか。継承語話者や在日外国人児童に日本語を教えている教師の方がよくおっしゃるのは、生徒たちの「生活言語」としての日本語能力と「学習言語」としての日本語能力の間の隔たりです。


外国語として日本語を勉強する場合(日本以外の国で)、子どもにしても大人にしても、この二つの能力の間にはあまり隔たりがなく、どちらかの能力が上がれば、他方も上がる、という双方向の作用があるように思われます。ところが、継承語話者や在日外国人児童は生活言語としての日本語のインプットは豊富にあるため、生活言語能力は比較的高くなるようです。しかし学習言語は見落とされがちです。また、その二つの能力の差が開けば開くほど、子どもたちはもどかしさから問題を避けて通ろうとする傾向があります。
本書は、継承語教育や在日外国人児童の日本語教育に携わる教師の方たちをはじめ、たくさんの方にぜひ読んでいただきたいと思います。サードカルチャーキッズの中には「自分は変だ」「みんなと違う」「みんなと同じようにできない」と思っている子どもたちが多くいます。その劣等感や不安を、「人を見下す」「強がる」「憤る」といった形で表現する子どもたちもたくさんいます。そんな子どもたちを少しでも理解し、利点を伸ばし、また教える側と教えられる側の信頼関係を築くための手助けになるのではないかと思います。

 

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