06

1月

2011

「ことば」に漬かると見えてくるもの (早稲田大学 宮崎里司)

ことば漬けのススメ』(明治書院)を紹介します。

外国語や第二言語を学ぶことに、苦手意識を持っている人は少なくないはずです。「先生もいない」、「教科書も辞書もない」、そんな環境のなかで、どうすればことばを習得できるのでしょうか? 拙著『外国人力士はなぜ日本語がうまいのか』(明治書院)の上梓以来、地元にとけこみながら、社会の中で日本語をモノにしていく外国人力士の姿は、多くの方に興味を持っていただきました。


そしてこの度、外国人だけではなく日本人にも「日本語教育」に関心を持っていただける本に仕上げるとともに、漫画というコミュニケーション・ツールを採用し、わかりやすく工夫してみたのが、拙著『ことば漬けのススメ』です。


外国人力士による24時間ことば漬けの環境の中で、何度も何度も繰り返しことばを学ぶひたむきさ。異文化をまるごと吸収しながら、日本語を使いこなすやる気。まさに、タイトル通りの「ことば漬けのススメ」を地で行くモデルです。この本では、外国人力士に限らず、外国人女将、留学生、外国人ビジネスマンや移住者など、それぞれの「ことばを学ぶ工夫」を紹介しています。


本書に出てくる日本人や外国人の留学生のストーリーも、「留学は、行く前から帰国後まで、常に先々を考え行動する、”Think ahead”が重要である」というメッセージを発信するために、工夫を凝らしたつもりです。


また、日本に住む外国人が感じることばの壁は、日本人の壁でもあるはずで、受け入れ側がどのように学ぶかを意識しないといけません。一方的に「学べ」、「なじめ」と要求しても、多文化共生社会はうまく機能しないのです。


私は、大学や大学院の講義では、「母語であれ、外国語であれ、ことばを学ぶ能力は、社会の中でモノの見方を多様化させるとともに、自らを成長させる原動力の一つになる」と説いています。ことばの学習は、教室での学習だけに頼らず、自律的に実現させていくものだという観点から、学生たちと日々その工夫を考えています。


そんな折、2010年に、国際言語文化振興財団の主催する第二回国際理解促進優良図書表彰の語学学習書部門にて、本書が幸運にも優秀賞を受賞しました。この賞は「国際交流の促進および国際問題の理解に役立ち、国際コミュニケーションの発展に寄与する著書、翻訳書、および実用語学力の向上に貢献する語学指導書」に贈られる賞です。授賞式では、選考委員長である、渡部昇一上智大学名誉教授から、「外国人力士の日本語習得に目を付けた点はまさに秀逸で、目からうろこだ」というありがたいお褒めの言葉をいただきました。


改めて、自らが手がけた本を読み返し、以下のような方々に本書を一読していただきたいと強く願っています。


留学を控えた皆さんへ

「限られた期間を効果的にフル活用するには?」、「留学してはみたものの…ちゃんとことばを身につけられたのか心配」という方々に、行く前にも、行った後にも読んでいただきたいヒントが満載です。


小学生や中高生、および英語教育の関係者の皆さんへ

今後は、日本での外国語教育も大きく様変わりします。新たな学習指導要領で導入される「外国語活動」で学ぶ予定の小学校高学年の皆さんには、どんな授業を行おうかと思案中の先生方と一緒に読んで学べる新感覚教材になります。加えて、コミュニケーション能力を高めたい中高生の皆さんにもうってつけです。


日本語教育・外国語教育に関心のある学生や、そうした教育に携わる教師の皆さんへ

単に、ことばを学ぶ技術を会得するだけではなく、「ことばを学ぶとはどういうことだろう」という基本に立ち返った課題に取り組み、日本語・外国語教育について考えましょう。


最後に、コラムについても「自分らしさとバイリンガル」、「外国人介護士」、「児童・生徒の外国語教育」、「夜間中学の外国人」、「ネイティブの役割」などといったように、現在の研究テーマをちりばめてみました。また、四コマ漫画は、一服の清涼剤、または閑話休題といった感覚で読んでください。


ことばに漬け浸すことで得られる学び・・。そこには、単にテクニックだけではない、ことばの学びと真剣に向き合うあなたが見えるはずです。

 

この記事のトラックバックURL


トラックバック / ピングバック 0

コメントをお書きください

コメント: 0

  • loading