近代における「世界語」① ヴォラピュク

ヴォラピュク (Volapük)は、明治12年にドイツ人シュライエルによって作られた人工言語である。「世界語」となることが目指されてきたが、現在の話者は100人にも満たないと言われる。政治的対立や言語的な要因から使用者が徐々に離れ、明治20年に発表されたエスペラントにその地位を脅かされてきた。ほとんど勢いを失ってしまっているが、日本でも一定の需要があったようであり、熱狂的な愛好家は今も世界で根強く残っている。

 

近代デジタルライブラリーでは、ヴォラピュクに関する最も古い文献として、明治21年に出版された『世界語文典和訳』(ケルクホーフス著、ワンデルヘイデン訳)が見られる。また、翌年に出版された『和訳世界語辞林』(ワンデル・ヘイデン、佐々木隼士編訳)も当ライブラリーに収められている。『世界語文典和訳』では、「ヴオラプウヰク即チ世界語」が「新聞雑誌ヲ発行シ皆競フテ之ヲ研究スル」対象であり、「勢力既ニ此ノ如ク盛大ナリ」として、世界各国で広く使われていたとしている。

 

そして、日本人にもその利益を享けてもらおうと、フランス人ケルクホーフスによって記された文典を和訳した旨が記される。使用文字や音韻、文法事項等を適宜日本語と比較しながら解説し、項目ごとに細かな例と「稽古問題」が用意されており、独習用にすっきりまとまっている。『世界語文典和訳』の本文は50頁に満たないが、『和訳世界語辞林』はヴォラピュク-日本語の対訳辞書として、300頁弱にわたって単語を掲げる。発音やその他の情報は無く、アルファベット順に並んだ単語に、日本語の意味を簡略に載せる。エスペラント流行以前に、日本におけるヴォラピュク普及の動きが確かにあったことを思わせる二書である。

 

(2010.12.1 更新)