第6回 歌で覚える国文法
受験生向けに、歌や語呂合わせによる学習法を掲載した本がたくさん出版されている。それは近代でも変わりがなかったようである。国文法の受験勉強に際して「歌」を利用するという、『歌で覺える國文法』(千代延尚寿、健文社、大正十四)が出版されている。タイトルからして現代の書籍に混じっても違和感がない。「歌」とは和歌のことであり、五七五七七の短歌形式がその中心を占めるが、五七五五七五のようなものもある。
全体は大きく「品詞篇」「文章篇」「參考篇
最近試驗問題集」「附録」の四つに分かれ、「品詞篇」「文章篇」において「歌」が披露されている。「品詞篇」では、名詞や動詞、助動詞の意味や活用といった事項が解説され、個々の項目の大部分に「歌」が添えられている。「名詞」は「物事の名を いひあらはすが 名詞にて 代名詞とは 名にかへていふ」、「動詞」は「動詞とは 事物の動作 存在を いひあらはすが その役目なり」、「感動詞」は「吾が心に 感動をして 思はずも 口に出る語が 感動詞なり」などと詠まれる。
解説が無ければ理解し難いところもあるが、初学者向けの取っ掛かりとしては今でも使えそうなものが多い。現代の受験産業でも教えていそうな「歌」も見られる。「體言に續くテニヲハ が、は、の、つ、に を、と、へ、より、迄、にての十一」「打ち消して ア段にひゞけば 四段活 イ段は上二 エ段は下二」「いと書くは老い悔い報いの三つのみ皆上二段活用のもの」などは、三十一文字に詰め込んだ努力を買いたい。今の通説とは考え方や用語が異なる部分もあり、この本だけで現代の受験に立ち向かうのは危険であろう。
しかし、この「歌」を用いて、当時の有名校の国文法の問題がずらりと並んでいる「最近試験問題」にどこまで太刀打ちできるものか試すのは楽しい。現代の知識があれば簡単に解けるかと言われると、「はい」と即答することは憚られるものも多く、自分の勉強不足を痛感する。ともあれ国文法の学習に和歌を用いるというその連関性・必然性には、受験生に対する、単なる暗記を超えた著者の深いメッセージを感じてしまう。それは現在の私たちにも届き得るメッセージである。
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